#106 慢性胃潰瘍 (消化器系2 その2)

#106 Gastric ulcer (chronic ulcer)

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解説

解説用画像1
解説用画像2

これは、慢性胃潰瘍である。胃角部近傍に単発性に生じ、長く存続する。バーチャルスライドを見てみよう。中央に深い陥凹があり、粘膜が失われている。この陥凹の底部は、表層を炎症性滲出液で覆われた線維性肉芽組織である。潰瘍底を拡大すると(2番目の写真)浸出液の層と滲出細胞の壊死巣、肉芽組織の層、そして線維性瘢痕組織の層からなることが分かる。胃壁はかなり厚くなり、潰瘍の辺縁では、再生粘膜という、粘膜が失われた時に特徴的に現れる、腺管密度の低い粘膜が見られる(1番目の写真)。再生粘膜では、芽出の目立つのう胞状腺管の存在が特徴である。こののう胞状腺管は「粘膜の蕾」と言ってもよい。多くの腺管が芽出した蕾が次々と開いて再生粘膜ができるのである。このスライドの再生粘膜では幽門腺の増生も著しい。(幽門腺は再生するが胃底腺は再生しない。また、幽門腺上皮は潰瘍の際に脱分化して幹細胞に戻り、粘膜を再生することができるが、胃腺上部の腺窩上皮は幹細胞に戻れない。)