#118 急性膵炎 (基本病変1 その6)

#118 Acute pancreatitis, mild, with fat necrosis

この標本には膵外分泌腺の腺房細胞の大きな壊死は見られないが、(別の部分で)腺房細胞より漏れ出したlipase、phospholipaseが活性化されて、周辺の血管を巻き込んで血流低下を来たし、脂肪組織にも虚血性壊死を起こすと同時に、細胞膜に穴を開け、脂肪を脂肪酸に分解し、そのため死んだ脂肪細胞はゴースト状に凝固する。一方、放出された脂肪酸はカルシウムと塩をつくり、白く析出する(鹸化 saponification)。この白い析出物自体は塩(金属石鹸)であり、真のnecrosisではないが、慣用的にfat necrosisと呼ばれている。(実際は、fat necosisに混在して脂肪細胞の凝固壊死も存在するので、fat necrosisということばはあながち間違いとも言えない。)

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解説

解説用画像

右側に脂肪壊死の像が見えます。乾酪壊死よりももっと脂質の多い状態で死んでいるので、細胞境界が見えないはずなのに、なぜghost様の細胞の残骸が見えているのでしょうか。(実習レポートのコメントにも書きましたが)これは凝固壊死の要素が残っているためです。でも消化酵素(リパーゼやトリプシン)が攻めてきて脂肪細胞が膜から溶かされるのであれば(積極的融解壊死となり)凝固しないはずですが・・・これは酵素によって血管が破壊された結果起こった虚血性の凝固壊死と理解できます。壊死部の境界が明瞭であることも、つぶれた血管の支配領域が壊死に陥っていることを示唆しています。ではなぜ脳梗塞のように空洞にならないのでしょうか。(強い急性膵炎では空洞=偽のう胞ができますが。)これは脂質が酵素によって分解された結果、肉眼的に白く見える石鹸ができるとともに脂質の凝固阻害作用も低下したためと推定されます。