滋賀医科大学 分子診断病理学部門

研究・業績

研究活動の理念・目標

当部門では、消化管腫瘍の発生と進展を中心テーマに、人体材料を用いた人体病理学の研究・ヒト疾患のモデル動物を作製する実験病理学の研究を展開しています。その際、形態解析を基本にしながら、定量的アプローチを重視し、分子細胞遺伝学的手法も取り入れて研究を進めています。

研究をデザインするにあたって心がけていることは、

  1. 数多くの症例を集めて大規模な研究をするよりも、数は多くなくても条件のよい材料を集め、一例一例丹念に多角的に解析すること
  2. 形態の変化を空間的にとらえるだけでなく、時間軸を常に意識し、病変を動的に理解すること
  3. 人体材料では解析に限界のある側面は、動物実験系や培養系を積極的に採り入れ、そこで得られた情報や新たな観点を人体材料にフィードバックしていくこと

などです。

実際に研究を進める際には、再現性のある解析的な研究レベルに到達するために、方法論(特に定量的アプローチ)を重視し、丁寧に時間をかけて試行錯誤を繰り返し、方法論の問題点を熟知した上で研究を進めることを心がけています。
具体的には、粘液、核酸および免疫組織化学、DNA cytometry、DNAのfluorescence in situ hybridization (FISH)や種々のブロッティングを行ってきました。最近では、comparative genomic hybridization (CGH)、PCRとgenetic analyzerによるfragment解析(LOH,microsatellite instabilityの解析)、DNAのメチル化解析、laser microdissection、whole genome amplification、real-time PCR、ゲノムマイクロアレイ解析、cDNAマイクロアレイ解析などの分子(細胞)遺伝学的な技術を磨いています。

分子生物学的手法も、あくまで組織というin vivoの場における細胞のふるまいを解析するための手段と考えています。その意味で、形態情報に基づいて組織から特定の細胞を選別しpurifyするmicrodissectionと、それによって得られた少数の細胞のゲノムDNAを遺伝子解析用に増幅する wholegenome amplificationは、これまでの病理形態学とゲノム解析を橋渡しする重要な方法として特に力を入れています。また、形態という総合的な情報と対応づけるために、ゲノム解析では、CGH、マイクロアレイ解析など、ゲノム変化を網羅的に検出できるアプローチを重視しています。

一方、ヒト腫瘍の原因とその病態発生を知るために、種々の動物を使って実験モデルを作製しています。動物実験では、実験のみが一人歩きしないように留意し、ヒト腫瘍から得られた情報を十分解析したのち最適モデルを作製し、病態発生論を幅の広いものにしたいと考えています。

このようなアプローチから得られた結果を徹底的に吟味してまとめ、既成の概念の枠にとらわれない新しい観点を積極的に提起することによって、疾患概念の発展に寄与したいと願っています。